ラベンダーと星空の約束
 


ポケットから恐る恐るスマホを取り出した。

握りしめる両手が震えている。



「掛けてやろうか?」


「それだけは駄目!
自分で言わないと…」


「なら、さっさと掛けろ」




震える指先で『大文字流星』の文字を画面に表示させた時、

私が掛ける前に着信音が鳴り響いた。



ビクッと体が震え、危うくスマホを落としそうになる。



着信は…流星から……



隣に立つ大樹を横目で見ると、
「早く出ろ」と言いたげな視線を返された。



心臓がバクバクと激しいリズムを刻んでいる。

一度大きく深呼吸してから電話に出た。




「流星…」



『ゆかりちゃん今忙しい?
電話しても平気?』



「うん…平気。
何か用事だった…?」



『特に用はないけど、明日帰って来ると思ったら待ち切れなくてさー!

何時に着くの?羽田まで迎えに行っちゃおうかな〜』



「あ…えっと…羽田には14:18着なんだけど……流星あのね…?えーと…」





凄く言い出し難い。

私が戻るのを心待ちにしているのが伝わり、心が苦しくなる。



戸惑う私の横で、
大樹がイライラしているのも伝わってきた。



とうとう痺れを切らした大樹に、スマホを取り上げられた。




「貸せっ」


「あっ!ダメ!大樹!!」


「結局言えねーんだろ?半端な事は許さねぇ。
俺が言ってやる。おい、流星よく聞け…」



「止めて!!言う、今言うから!!
お願い…自分の口から言わせて……」



「イライラさせんな。さっさと言え。
ごまかさないでハッキリ言えよ」





私の耳にスマホを押し付け返してくれた。



ごまかすなんて出来ない。

今のやり取りが、電話の向こうの流星にも聞こえてしまったから。




『…ゆかりちゃん…何、今の会話……隣にいるのは大樹…?』



「うん… 流星……私…大樹と付き合う事に決めたの。

だから…ごめんなさい……流星の気持ちに応えられない……」



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