ラベンダーと星空の約束
大樹に背を抱かれたまま、暫く泣いていた。
慣れ親しんだ温もりが、私を癒してくれる。
波打つ心はゆっくりと落ち着きを取り戻し、
やがて涙を収めることが出来た。
大樹がズボンのポケットから何かを取り出し、私の左手首に付けた。
それはブレスレット。
素材はシルバーの細いチェーンで、
5枚の花弁を持つ小さな花が一つぶら下がっていた。
花の中心には、アップルグリーン色の透明な石が埋め込まれている。
「ペリドット…?」
「よく分かったな。8月のお前の誕生石。
誕生日過ぎちまったけどプレゼントにやるよ」
「ありがとう。可愛いね………… 高そう。
これいくらしたの?
お小遣なんてすぐに使っちゃうのに、どうやって買ったの?」
そう言うと大樹は呆れた顔をした。
「普通さ…可愛い女ってのは、こういう時値段なんて聞かねぇもんだろ?」
「あんたの前で今更かわい子ぶるなんて不可能だから。
ねぇ、本当にお金大丈夫?まさか借りてまで…」
「借りてねーよ。
ゲームソフト20本売って買ったから、変な心配すんな」
ゲームソフト20本…
少ないお小遣で何年も掛けて買い集めた物…
私にはゲームなんてと思ってしまうけど、大樹にとっては宝物。
ゲームソフト20本分のブレスレットを見て、
喜びよりも苦しさが込み上げてきた。