ラベンダーと星空の約束
◇◇◇
東京へ戻る日の早朝、
大樹が収穫作業の合間に少しだけ会いに来てくれた。
学校を辞める方向で考えているから、またすぐに帰ると思うけど、
それでも大樹は淋しそうな顔をしていた。
私だって淋しいし、
そう思ってくれるのも嬉しい。
でも…
家族勢揃いのリビングで、
別れのキスをするのは止めて欲しかった。
青空は知っているからいいとしても、両親は寝耳に水。
当然の事ながら、盛大に驚かせてしまった。
青空が自分だけは知っていたと、得意気に喋り出したので、
慌てて頭を叩いて黙らせた。
お母さんは興味津々に身を乗り出して聞いてるし、
この子なら調子に乗って、私の初体験の目撃談までポロッと言ってしまいそう。
「青空!!それ以上言ったら怒るからね!」
「痛ってー、何だよ…
この夏休み、俺がどんだけ気を利かせて2人にしてやったと…」
「青空っ!!
もうっ大樹!この子黙らせてよ!余計な事まで…」
「隠す事なんか何もねぇだろ。
おじさんおばさん、俺、紫と付き合ってるし、やることやってるから。よろしく」
「た…大樹っ!!」
「よろしく」じゃない!
何言ってるのよこのバカは!
いきなりそんなことバラされたら恥ずかしいし、
何より両親のショックが……
あれ…?
ショックは受けてないみたい。
それどころか明らかに喜んでる。
お父さんは
「お前よく頑張ったな!」
なんて大樹の頭を撫でていた。
お母さんは
「大樹が可哀相で見てられなかったよ。
私の娘のくせに、何でそんなに鈍いのさ」
私のこめかみを拳でグリグリしてきた。
もしかして…
大樹の気持ちに気付いてなかったのは、当の本人の私だけ…?
家族みんな知ってたの…?
何よそれ…
知ってるなら、誰かもっと早く教えてよ…
そうしたら
流星を傷付けることも無かったのに……
喜ぶ家族と冷やかされても動じない大樹を残し、
溜息をつきながら、一人フラノを後にした。