ラベンダーと星空の約束
 


泣いてはいけない。
私には泣く資格なんかない。



流星を軽薄さの中に押し戻したのは自分。



それなのに…
溢れ出す涙を止められなかった。



ボロボロと零れ落ちる涙を見せたくなくて、両手で顔を覆って俯いた。




「何泣いてんのさ…」



少し呆れた声が側に聞こえた。



私の前に来てしゃがみ込んだ彼は、頭をポンポンと優しく叩いて慰めてくれる。




「君の決断は間違ってないと思うよ?

大樹なら俺みたいに女にだらし無くないし、君を怖いくらいに思ってくれる。

ゆかりちゃんも大樹の気持ちに応えたいって思うなら、それでいいんじゃないの?


俺はさー…心も心臓も上手くコントロール出来ないって言うか…
不完全な男だし、将来的な事を思えば大樹を選んで正解だよ。


それに…俺もゆかりちゃんは違うかなーなんて思い始めてたし……

君なら空想の中の、紫(ムラサキ)ちゃんを超えてくれるかと期待したけど…

やっぱり無理そうなんだ。


ハハッ 生身の女の子より空想の女の子って…俺って超ヤバイ」




「流星…ごめん…ごめんね……」




「だから、謝る必要も泣く必要もないって。

ゆかりちゃんは大樹を選んだ。
俺は紫(ムラサキ)ちゃんを選んだ。

ほら、drawだろ?」





慰めてくれる彼の言葉に、胸が押し潰されそうになった。



自分から振っておきながら、紫(ムラサキ)ちゃんを選ぶと言われ傷付いている。



勝手な自分がつくづく嫌になった。



紫(ムラサキ)ちゃんは私。

でも記憶のない流星の中の彼女は、もはや私では無い。



正体を明かす事が出来ない以上、紫(ムラサキ)ちゃんは永遠に私ではないのだ。



自分だけど自分じゃない女の子に醜く嫉妬する気持ちが、滑稽で浅ましく思えた。




「ほら〜、もう泣かな〜い。目が腫れちゃうから。

これからも柏寮の仲間として楽しくやろうよ。ねっ?」



「流星……私…学校辞めて地元に帰ろうと思ってるの」



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