ラベンダーと星空の約束
心を騙す代償

 


 ◇◇◇


ニ学期が始まり数日が過ぎた。


中退に多額のお金が必要とは知らなくて、フラノに帰る事は不可能になった。


それを大樹に伝えると、
不服そうな声を漏らしながらも、仕方ない事だと諦めてくれた。




朝、教室に入り席に着くと、真由と千絵梨がやって来て私を取り囲んだ。



「紫、待ってたよ〜!
持ってきてるでしょ?早くっ 早くっ 見っせて〜」



2人が何を催促しているのかと言うと、大樹の画像。


夏休みで彼氏ができたと報告していた。


すると2人は興味津々で、大樹の事をあれこれと聞いてくる。



昨日は「写メ見せて」と言われたけど、

写メも普通の写真も、大樹が写っている物を東京には持ってきていない。



それで昨日大樹に

「自分撮りの写メを送って」

と学校からメールしたら…


予想はしてたけど
「絶対嫌だ」と断られた。



自撮り写メを送る大樹なんて…らしくなくて、

私もちょっと嫌な気もするし、それは不満に思わないよ。



だから青空に電話して、
家のPCの写真フォルダから、

比較的新しい大樹の画像を私のスマホに送信して貰った。



その画像は今年の春の、こじんまりとした射会のもの。



白筒袖と黒袴姿の大樹が、的を静かに見つめ、弓を構えている。



弓を引いた姿勢で静止し、
矢を放つ前の『静』の瞬間を捉えた物。



弓道の一手の中で私が一番好きな

『動』と『動』の間の『静』の瞬間の画像だった。



その画像を見せると、
2人は食い入る様に品定めを始めた。



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