ラベンダーと星空の約束
 


瑞希君に全てを話すと、
きっと軽蔑される。
「酷い」と怒ると思う。


それでもいい。
むしろ怒って欲しい。


私を責めなかった流星の代わりに、罵って叱って欲しかった。




瑞希君に全てを話す。

期待に反して、
彼は「うんうん」と話しを聞くだけで、怒ってはくれなかった。


聞き終わると、額に手を当て深い溜息をつく。




「なるほどね…
それで君は、手枷(テカセ)を付け落ち込んでるんだ…」


「手枷?」


「それのことだよ」




“手枷”と言われたのは、左手首のブレスレット。

言われている意味は何と無く分かる。



男が女にアクセサリーを贈るのは、独占欲の表れ。

ブレスレットは手錠。
ネックレスは首輪。



大樹がそういう意味を込めたとは思わないけど、
確かにこのブレスレットは、その質量以上に重たく感じる。



重たい大樹の想い…



だけどそれは、
受け止め、同じだけの愛を返したいと望んだ想いでもある。




「紫ちゃんも辛いと思うけどさ…

大ちゃんはかなり衝撃くらったと思うよ?
大ちゃんが可哀相だよ…」




友達として流星に同情する瑞希君。

私も初めはそう思っていた。

流星が傷付くのが怖くて、彼をどん底に突き落とすんじゃないかと心配した。


でも…



「でもね…流星に言われたのは…私は何か違うって……

私じゃ紫(ムラサキ)ちゃんを超えられないと分かったから…おあいこだって……」




そう…
流星はもう、私に気持ちはないんだよ…



気持ちがない所か、
お弁当を食べてくれない所を見ると、マイナスの感情を持たれてしまったのかも。


流星の気持ちに応えられなかった以上、その方がいいに決まってる。


それなのに、
そのことに傷付いている自分が確かにいる…




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