ラベンダーと星空の約束

 



 ◇◇◇


季節は秋。
10月の風は乾燥し砂埃を含んでいる。


それが開け放たれた窓から入ってきて、

古く滑らかな柏寮の板の目を、すぐにザラザラとした不快な感触に変えてしまう。



学校から帰り長い廊下にモップをかけるのが、最近の日課になっていた。



玄関の上がり口から、奥に向けモップを滑らせる。

突き当たりで立ち止まり、
流星の部屋のドアを見つめた。



玄関に靴はあるから、部屋にいるのは確か。

それなのに、
110号室の中からは物音一つ聞こえない。




『声掛ければ、
また遊んでくれる女の子もいるから…』


そう言われたけど、女の子を連れ込んでいる様子もなく、

静まり返った部屋の中で、流星が何をしているのか気になっていた。



私達が会話する機会は極端に少なくなった。

朝、玄関で顔を合わせた時に
「おはよう」と声を掛け合うくらいだ。



希薄になってしまった関係は、
瑞希君以外の寮の皆もすぐに気付いたみたい。



でも…
「何があった?」とは直接聞いてこない。

きっと瑞希君が、亀さんとたく丸さんに上手く説明してくれたのだろう。



以前は焼肉パーティーや鍋パーティー、
頻繁に皆で集まりワイワイやっていた。

私達に気を遣ってか、
二学期始まってからの集まりは、まだ一度もなかった。




この一ヶ月間、
流星の体調が気掛かりだった。



お昼は食堂に行くようになったみたいだと瑞希君が教えてくれたけど、

夕飯は相変わらずコンビニ弁当みたいだし…



凄く迷った末、栄養面を考慮したおかずをどっさり作って、

流星の口に入ることを願いながら、瑞希君に度々託していた。



< 312 / 825 >

この作品をシェア

pagetop