ラベンダーと星空の約束
 


冷水を浴びる自分を想像し鳥肌が立った時、
亀さんが他の方法を提案してくれた。



「皆で銭湯に行くか」



すぐに瑞希君が賛成する。



「それいーねー!
温泉なら行ったことあるけど、僕 普通の銭湯って初めて!

近場の銭湯ってどこにあるの?たく丸君知ってる?」



「ここから自転車で15分の所に、亀の湯があるよ」



「亀の湯! 銭湯ぽくていい名前!
あれ? もしかして亀さんの親戚の店?」



「瑞希… 亀の湯の経営者の名前が亀井戸である確率は、相当低いと思うぞ?」



「やだなー亀さん冗談だよ。
そんな憐れみの視線を向けられる程、僕はバカじゃないよー」





そんなこんなで、誰もが銭湯気分になっていた時、

流星だけは「行かない」と言い出した。



「俺、水シャワーでいいよ。
留守番してるから4人で行ってきて」



「大ちゃん銭湯嫌い?
それとも、手術跡見られるの気にしてる?

男湯なんだからいいじゃん。番台は年輩のおばちゃんだろうし…」



「いや…手術跡云々じゃなくて、チャリで行こうとしてるだろ?

チャリ4台しかないじゃん」





柏寮には4台の自転車がある。

個人の持ち物ではなく、
車体に白いペンキで“柏寮”と書かれた寮の持ち物だ。



建物同様、この自転車も年季が入っていて、
ブレーキレバーを握るとキィィと嫌な音が響くし、

一足漕ぐ度にガチャンガチャンと壊れそうな音がする。




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