ラベンダーと星空の約束
瑞希君に押し切られ、
どうやら私達の自転車2人乗りが決まったみたい……
それぞれの部屋に戻っていく中、
流星と一瞬だけ目が合い、その後すぐに逸らされた。
逸らされたと言うと一方的に聞こえてしまうけど…
私も同時に逸らしたから、同じ気持ちだと思う。
最近は挨拶程度の会話しかしてないので、気まずい事この上ない…
お風呂セットを持ち玄関前に集合した。
流星も諦めたみたいで、
文句を言わずに出てきてくれた。
私の荷物を前カゴに入れると、
自転車に跨がり顔だけ私の方に向ける。
「乗って。不本意かもしれないけど、お腹に腕を回して掴んでて。
途中で落としたらと思うとスピード出せなくて、皆に置いてかれるから」
「うん…」
不本意じゃない。
流星に触れると思うと、
ドキドキする心を抑え切れない。
『流星に指一本触れさせんな!』
大樹にはそう言われたけど、これはノーカウントだよね…?
自転車の荷台を跨いで座り、
流星のお腹にそっと腕を回した。
こうすると必然的に、
顔や胸元が流星の背中にくっついてしまう。
薄手の上着越しに彼の温もりを頬に感じる。
どうしよう…
ドキドキが加速していく。
急上昇した心拍が流星の背中に伝わるのではないか…
そんな心配するくらい、ドキドキしていた。
流星の温もりに心が震え、
回している腕の力を少しだけ強めていた。
◇
銭湯に着き、自転車を下りるのが残念に思ってしまった。
物惜しげに流星を見ると、
心臓の位置に片手を当て赤い顔をしていた。
「流星? 大丈夫?
もしかして…心臓苦しいの!?」
「いや…少し動悸がするだけ。大丈夫」
「あ…私、重いから大変だったよね?ごめんね?」
「重くないし、動悸の理由はそれじゃな……あ〜…何でもない。
大丈夫だから、ほら入るよ? 30分後にまたここで」