ラベンダーと星空の約束
 


流星は言葉を濁して苦笑いを浮かべると、
皆と一緒に男湯の暖簾を潜って行った。


私はまだ立ち止まり、彼を心配していた。



本当に大丈夫かな…
動悸が治まってからお風呂に入った方が……


あれ…?
そもそも何で動悸なんてするの…?



体育祭の時に聞いた、
運動を避けている理由を思い出していた。



移植された心臓の神経は、流星の体と繋がっていない。

だから運動しても、心拍の上昇がやたらと遅いと言っていた。



息が切れても中々上がらない心拍に違和感を感じ、
それが不快だと言っていた。



今の流星は息切れもしていないのに、赤い顔して動悸がするって…


あれ?何で?
逆じゃないと矛盾するのに。



考え込んでいると、
男湯の方が何だが騒がしくなった。


それで分からない疑問を頭の隅に追いやり、暖簾を潜った。




亀の湯は下町の昔ながらの銭湯という雰囲気で、

男湯と女湯の玄関の真ん中に番台があり、

60代半ばの女性が一人座って、男湯の脱衣所をじっと見張っていた。




「あんた本当に男の子だったんだね。
へえ、ちゃんと立派な物ついてるわ」



「おばちゃん!
そんな恥ずかしいこと大声で言わないでよ!

あっ! そこのおじさんもジロジロ見るの禁止!

だから〜僕は男だって言ってんのに!もう〜!」




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