ラベンダーと星空の約束
 


騒ぎの理由は瑞希君か。


ツインテールでメイクしてスカート履いて男湯に入れば、

驚かれるのも興味を持たれるのも無理はないよね。



例え立派な物が付いていても、
瑞希君は女湯に入った方が自然な気がする。




「お金ここに置いときますよー」


そう声を掛けると、
番台のおばちゃんは、やっと私の存在に気付いてくれた。




「おや、今日は若い子が多いねぇ。あんたも初顔だね。

おサイフケータイも使えるからね。
ポイントも付くし現金払いよりお得になるよ」




下町風情を色濃く残した昔ながらの銭湯に、
電子マネー…

もの凄く違和感がある。



取りあえず、勧められた方法で支払いを済ませ脱衣所を見回すと、

違和感は電子マネーだけじゃなく、細々とした所が微妙に近代的だった。



脱衣籠は籐のかごで年季が入ってるし、

風呂桶はケロリンて書いた黄色い懐かしの物で、この銭湯の雰囲気に合っている。


だけど、ヘルスメーターは体脂肪測定も出来るデジタル表示の物。



お風呂の壁に富士山が描かれた銭湯なら、アレが良かったな…

やたらと大きくて草色で、乗るとガシャンと大きな音がする、アナログな体重計。



マッサージ機もこんな高性能な物じゃなくて、

アームが二つ飛び出でいる、叩く機能しかない古いヤツが見てみたかったな…



ビンのコーヒー牛乳もフルーツ牛乳も置いてないし……微妙に残念。



新旧ごちゃ混ぜで、違和感ありまくりな亀の湯だったけど、

久しぶりの大きな湯舟はとても気持ち良かった。



< 318 / 825 >

この作品をシェア

pagetop