ラベンダーと星空の約束
騒ぎの理由は瑞希君か。
ツインテールでメイクしてスカート履いて男湯に入れば、
驚かれるのも興味を持たれるのも無理はないよね。
例え立派な物が付いていても、
瑞希君は女湯に入った方が自然な気がする。
「お金ここに置いときますよー」
そう声を掛けると、
番台のおばちゃんは、やっと私の存在に気付いてくれた。
「おや、今日は若い子が多いねぇ。あんたも初顔だね。
おサイフケータイも使えるからね。
ポイントも付くし現金払いよりお得になるよ」
下町風情を色濃く残した昔ながらの銭湯に、
電子マネー…
もの凄く違和感がある。
取りあえず、勧められた方法で支払いを済ませ脱衣所を見回すと、
違和感は電子マネーだけじゃなく、細々とした所が微妙に近代的だった。
脱衣籠は籐のかごで年季が入ってるし、
風呂桶はケロリンて書いた黄色い懐かしの物で、この銭湯の雰囲気に合っている。
だけど、ヘルスメーターは体脂肪測定も出来るデジタル表示の物。
お風呂の壁に富士山が描かれた銭湯なら、アレが良かったな…
やたらと大きくて草色で、乗るとガシャンと大きな音がする、アナログな体重計。
マッサージ機もこんな高性能な物じゃなくて、
アームが二つ飛び出でいる、叩く機能しかない古いヤツが見てみたかったな…
ビンのコーヒー牛乳もフルーツ牛乳も置いてないし……微妙に残念。
新旧ごちゃ混ぜで、違和感ありまくりな亀の湯だったけど、
久しぶりの大きな湯舟はとても気持ち良かった。