ラベンダーと星空の約束
 


「避けてたの…?」



「ハハッ 流石はゆかりちゃん。気付いてなかったとは…参るね……」





避けられてる意識はなかった。

気まずいから以前の様に
「ちょっといい?」って部屋をノックする事が無くなり…

お弁当の日も無くなって…


会話する機会が減るのは当前だから、避けられているなんて思わなかった。




「私と話しをするのは…嫌?
顔を見るのは…辛い?」



「嫌じゃないから…辛いよ…

もっと簡単にふっ切れる筈だったのに…思い通りには行かないみたいだ。

ゆかりちゃん、ここで立ち話も何だし、多摩川縁に行って話さない?

今日は新月だから、星も良く見えそうだ…」





流星につられて天を仰ぐと、
夕暮れの光りはいつの間にか消え去って、夜の帳(トバリ)が下り始めていた。


紫色の空に、ぼんやりとした輪郭の細長い雲が幾筋か漂っている。



雲が少なく新月の…月のない今宵は、
流星の言う通り、都会の空でも沢山の星が見えそうだった。




流星は髪を乾かしてない私に気付く。

私の首に掛けていたタオルを取ると、流星と同じ様に頭に巻いてくれた。



土方のお兄さん巻きの私の頭を見て、
「プッ」と吹き出している。




「あー、ゴメンゴメン。
どんな頭でも可愛いから。
それに風邪引くよりはいいだろ?」



「うん…」





可愛いと言われて顔が赤くなる。


来た時と同じ様に、流星のお腹に腕を回し体を密着させると、苦しい程の動悸が始まった。



赤い顔…動悸……


そうか、ここに来た時に不思議に思った事はこういう事だったのか。



流星が息切れしてないのに、赤い顔して動悸がするって言ったのは…

今の私と同じ気持ちだったから。



こうやって体を触れ合う事に、ドキドキしていたんだね…



紫(ムラサキ)ちゃんには敵わなくても、私はまだ流星に好かれている…

嬉しくなって…困るよ…




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