ラベンダーと星空の約束
夕食がまだな私達は、
途中のコンビニでお握りとお茶を買い、
再び自転車に乗って多摩川縁にたどり着いた。
まだ緑を色濃く残している草地を歩くと、
足元付近の秋の虫達が、ピタリと鳴くのを止めてしまう。
草地の中の適当な場所に、
人ひとり分の間隔を開けて並んで座った。
「寒くない?
上着貸そうか?」
「寒くないよ。流星こそ寒くない? 風邪引かないでね?」
「ん。俺も平気。
寒いと思ったら帰ろうって言うから、心配しないで」
本当は少しだけ肌寒いと感じていた。
私の羽織ってきた物は、
ジャンパー代わりの薄いボタンシャツ。
東京でも10月に入ると気温がぐっと下がり、
寒さを感じる風が川辺の草葉を揺らしていた。
だけど、寒くても帰ろうなんて、私からは言い出したくない。
流星が以前の様に、沢山話してくれるのが嬉しくて…
2人でまた星空を眺めることが幸せで…
このまま時が止まればいいのにと思ってしまう。
買ってきたお握りを食べながら、流星は秋の星空を解説してくれた。
夏の星座と違って、
私には秋の星座はよく分からない。
流星が「あの星と、あの星を繋いで……」と星座を説明してくれるけど、
前にここに来た時の様に、彼の膝の中に入れてくれる訳ではなく、
人ひとり分開けた隣に座る、彼の指差す星の位置は分かり難い。