ラベンダーと星空の約束
真剣に説明を聞き星を探してみるけれど、正確に図形を掴み切れない。
秋の星座は夏に比べると、キラキラした輝きを与えてはくれなかった。
カシオペヤ座、アンドロメダ座、ケフェウス座、ペルセウス座……
流星から初めて聞く秋の星座の登場人物達。
夏であれ秋であれ神話を聞く度に思うことは、
古代の神々は超越した力を持っているのに、心がやけに人間っぽいという事。
神話の世界の神々の怒りの根源は、大体において愛憎もの。
恋をして裏切って、報復を受ける。
裏切りか……
こうやって流星と2人でいることは…大樹への裏切りに当たるんだろうか…
ドキドキしながら流星の語る神話の世界に浸ることは、
いけないことなんだろうか…
流星が星座の物語を話し終えてから、しばらく無言の時間が流れた。
私達の間を、夜と川の匂いを含んだ、冷たい風が吹き抜けていく。
銭湯で温まった体は、すっかり冷え切っていた。
でも寒そうな素振りなんて見せたくない。
もう少しだけここにいたい。
流星の隣に……
「ゆかりちゃん…
今、何考えてる?」
「流星のこと…
流星が『嫌じゃないから辛い』って言ったこと…
ごめんね…本当は流星の前から消えるべきなのに…
柏寮から離れられなくて…ごめんなさい……」
「それは君のせいじゃないから謝らなくていい。
柏寮を出て行くって言うのを止めたのは、俺なんだから」