ラベンダーと星空の約束
 


真剣に説明を聞き星を探してみるけれど、正確に図形を掴み切れない。


秋の星座は夏に比べると、キラキラした輝きを与えてはくれなかった。



カシオペヤ座、アンドロメダ座、ケフェウス座、ペルセウス座……



流星から初めて聞く秋の星座の登場人物達。



夏であれ秋であれ神話を聞く度に思うことは、

古代の神々は超越した力を持っているのに、心がやけに人間っぽいという事。



神話の世界の神々の怒りの根源は、大体において愛憎もの。



恋をして裏切って、報復を受ける。



裏切りか……


こうやって流星と2人でいることは…大樹への裏切りに当たるんだろうか…



ドキドキしながら流星の語る神話の世界に浸ることは、
いけないことなんだろうか…





流星が星座の物語を話し終えてから、しばらく無言の時間が流れた。



私達の間を、夜と川の匂いを含んだ、冷たい風が吹き抜けていく。



銭湯で温まった体は、すっかり冷え切っていた。

でも寒そうな素振りなんて見せたくない。



もう少しだけここにいたい。
流星の隣に……




「ゆかりちゃん…
今、何考えてる?」



「流星のこと…

流星が『嫌じゃないから辛い』って言ったこと…

ごめんね…本当は流星の前から消えるべきなのに…

柏寮から離れられなくて…ごめんなさい……」



「それは君のせいじゃないから謝らなくていい。

柏寮を出て行くって言うのを止めたのは、俺なんだから」



< 322 / 825 >

この作品をシェア

pagetop