ラベンダーと星空の約束
頭を押さえられたわけじゃない。
彼の両手は、私の両手をそっと握っているだけ。
顔を背けることだって、
跨がっている足の上から下りて逃げ出すことだってできた。
だけど私は、ゆっくりと近づいてくるその瞳に合わせて目を閉じ、流星のキスを受け止めた。
優しくそっと触れる唇が温かかった。
その温もりは私の唇に触れた後、
頬に触れて、涙の止まらない瞳に触れて、
静かに離れていった。
目を開けると、
至近距離に優しく潤んだ茶色の瞳があり、私を真っすぐに見つめていた。
言葉に出さなくても、
流星の気持ちが瞳の奥から溢れている。
「好きだよ」って…
その瞳が語っている…
絡み合う視線の距離がゆっくりと縮まり、
視界に写るのは、彼の瞳の綺麗な茶色のみ。
再び重なった唇は、
ゆっくりと私の唇を押し開き、深く深く口づけてくる。
数ヶ月振りの流星の味と香りが、
媚薬の様に私を支配し、
思考力を奪っていく。
何も考えられない…
考えたくない…
今はこの気持ちのいいキスに
酔いしれていたい……
繋いでいた流星の左手が、
私の右腕全体をゆっくりと上下に摩り始めた。
私の腕の感触を堪能する様に、
緩やかに肌を滑る指先。
腕を摩られているだけなのに、
今まで体験した事ない快感が走る。
甘い痺れが右腕から中心に向けて流れ、体を熱くさせて行った。