ラベンダーと星空の約束
 


「知らなーい。僕ばっか頼ってないで、自分で何とかしなよ。

イライラするんだよねー。
いつもいつも僕を間に挟んで、微妙な関係を続けてさー。


イライラし過ぎて今回のテストの英語、いつもより悪そうなんだよねー。

成績下がったらどうしてくれるのさ?


うちのクラス担任、生活指導の先生だからさ、

『そんな格好してるから勉強に身が入らないんだ!』とか、

関係ないお説教くらう羽目になるよ。


大ちゃんなんかさー、悩んでる顔してるくせに、中間テストも学年トップ守っちゃってさー。

今回の期末もどうせ1位なんでしょ?


あーはいはい、そうだったね。

高校で習う範囲なんか、中学の時に全て覚えちゃってるから、勉強しなくても出来るって言いたいんでしょ?

そんなに頭いいくせに、恋愛で僕を頼らないでよねー。


紫ちゃんもだよ。

僕は君達のお父さんじゃないんだから、面倒見させないでよ。


あー疲れた。僕もう部屋帰るからね。

2人で話し合いでもごまかし合いでも、イチャつくんでも、何でも好きにすればいいんだよ!」





瑞希君は言いたい事を早口でまくし立てると、走って2階に上がってしまった。



「テストの出来が悪かったのを、私達のせいにしないでよ」とか

「お父さんじゃなくて、お母さんでしょ?」

なんて突っ込む隙は無かった。



瑞希君が居なくなり、
何とも気まずい空気が漂う玄関先で、

私は俯き、流星は耳の裏をポリポリと掻いて困っていた。




「えーと…ゆかりちゃん、夕飯食べて来た?」



「まだ」



「じゃあさ、俺もまだだから、これからコンビニに……」



「私が作る!」



「え…? いいの?」



「心配掛けたお詫びに夕飯作りたい。
それで…一緒に食べよ?」



「ん…じゃあ遠慮なくご馳走になるかな」





無理だろうと思いながらも、
瑞希君も一緒に夕飯どう?と誘ったが、部屋から出て来てもくれなかった。



諦めて流星と2人で私の部屋に入った。



火の気のない部屋の中は
玄関や廊下と変わらないくらいに寒かった。



私の部屋の唯一の暖房器具は古びたこたつ。



これも炊飯器やIHコンロと同様、卒寮生が置いていってくれたお下がりだ。



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