ラベンダーと星空の約束
 


流星が居なくなった部屋の中は、一段と冷え込んだ様に感じた。



一人切りの部屋の中、
ぽっかり開いた心の穴に、隙間風が容赦なく吹き抜けていく。



古い柏寮はあちこち隙間だらけで、外気と室温が変わらないと思うくらいに寒かった。



こたつ布団を引き寄せ
冷えた体を温めようとした。



暖房器具はこたつだけじゃ厳しいかも。

小型電気ヒーターでも買った方がいいかな……



ふと、フラノの実家が恋しくなった。



北海道の住宅は機密性が高くて暖かい。

窓は二重サッシだし、
壁には分厚い断熱材が埋め込まれている。



外気がマイナス30度であっても、暖房付けっ放しの室内はいつも暖かく、

弟の青空なんか、真冬に半袖でアイスクリームを食べている。



東京って…柏寮の冬って…
フラノより寒いんだね……



静かな部屋の中、こたつでうずくまっていると、

スマホのバイブ音が小さく耳に響いて消えた。



そういえばマナーモードにしたまま、まだ解除していなかった。



こたつから這い出し、
ハンガーに吊してあるコートのポケットからスマホを取り出した。



不在着信5件。
メール受信1件。



不在着信は2件が昼間の流星からで、3件が大樹の夕方からのものだった。



メールを開くと

『電話出れねーの?何かあった?』

これも大樹からだった。



こたつに戻り大樹に電話を掛けると、1コールで繋がった。




『やっと掛けてきたか。
何やってたんだよ』



「ごめん。マナーモードにして解除するの忘れてた」



『バカ。何かあったのかと思って心配しただろ?
あー良かった……』





流星に心配掛けた後に、
大樹にも心配掛けてしまった。


今日の私は心配掛けてばかりだね、自重しないと。




「何か用事だったの?」



『あぁ、クリスマスに何欲しいか聞こうと思って、電話したんだ』



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