ラベンダーと星空の約束
クリスマスイブの店内は混み合っていて、
買物カゴに食材をいっぱい詰め込んだ家族連れで賑わっていた。
買物客は商品ばかりに目を向けていから、
サンタガールは思ったより注目を集めず、瑞希君は残念そうだった。
そんな中で2〜3歳くらいの小さな男の子が
「サンタしゃんのおねーちゃーん!」
と瑞希君に駆け寄ってきた。
小さな男の子一人だけでも注目してくれた事が嬉しかったらしく、
瑞希君は笑顔でその子を抱き上げた。
近くにいたその子の母親も
「サンタさんに抱っこして貰えて良かったねー」
なんて言いながら、ニコニコ笑っている。
「おねーちゃん、トナカイしゃんときたの?」
「そうだよー。
お姉ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんだけどねー」
瑞希君がそう言うと、
男の子は不思議そうに首を傾げて口をポカーンと開けていた。
その子の母親は…
ゆっくりと息子を瑞希君の腕の中から取り返すと、
微妙な笑顔で会釈し、足速に去って行った。
「プッ…クックックッ…アハハハッ!
瑞希君…アハハッ…お兄ちゃんて言わない方が良かったかもねー…アハハハッ!」
「なんだよ〜あの母親〜
偏見だよ偏見!! こんなに似合うのに女装のどこがいけないのさ!
偏った物の見方してたら、子供の可能性を狭めると思わない?」
「クククッ…可能性?
あの子が将来女装に目覚める可能性?アハハッ」
「そうじゃなくて、もっと大儀的な意味で!
もうっ 紫ちゃんもいつまでも笑ってないでよ!」
瑞希君に悪いと思いながらも暫く笑いが収まらなかった。
柏寮に帰ったら皆にも教えてあげよう。