ラベンダーと星空の約束
涙目の私を取り巻いて、小突いたりからかったりしてくる陽気で素朴なクラスメイト。
その中に、大切な人がいない事に気付いた。
大樹…?
大樹の席に目を向けると、
静かに席を立った彼は、無言で教室を出て行くところだった。
何で…
普段の大樹なら
「受かりやがったのかよ」なんて憎まれ口叩きながらも、
真っ先に祝ってくれるはずなのに…
様子が変……
慌てて大樹の後を追い、教室を飛び出した。
「戻れ!」と担任の先生が後ろで叫んでいたけれど、それに答えず大樹を追い掛けた。
「大樹待って!」
呼び掛けても振り向かない。
足早に歩く大樹に、保健室前でやっと追いついた。
後ろから腕を掴むと、ピクッと体を震わせやっと足を止めてくれた。
「大樹…どうしたの?」
恐る恐る後ろから声をかける。
すると大樹は保健室のドアを勢いよく開け、
私の手首を掴んでその中に引っ張り込みドアを閉めた。
生徒数の少ないうちの学校は常任の保健の先生なんていない。
小さな保健室の中は私と大樹の二人きりだった。
背を向けたまま私の手首を離さない大樹。
その顔を見ようとして前に回り込もうとしたが、
突然振り返った彼に抱きしめられてしまった。