ラベンダーと星空の約束
チキンを片手に亀さんが聞いた。
「月岡さんはもう志望大学決めてあるのかな?」
「私は大学に進学はしません。
卒業したら実家に戻って家業に専念するつもりですので」
「進学しないのか…驚いたな。
興味本位で聞いてもいいかな?
何でうちの高校に来たんだい?
明絖は一応進学校なんだけど……」
「あ…えーと…それは……」
亀さんは、私と流星の関係をどこまで知っているのだろう。
付き合う寸前まで行き、結局大樹を選び、
今はただの寮の仲間として上手くやって行こうとしているのは、分かっているみたい。
瑞希君が亀さんとたく丸さんにある程度の説明をしていると思ってたけど、
『なぜ明絖に入学してきたのか』と聞くのは…
私が流星を追って来た事も、
流星に素性を隠している事も知らないみたいだね。
そもそも紫(ムラサキ)ちゃんの存在も知らないのかもしれない。
亀さんには全て正直に言いたい気もするが、
流星が同じ部屋の中にいる今、本当の事を説明する訳にはいかない。
私が紫(ムラサキ)ちゃんだって事は…
流星に絶対に知られてはいけないから…
お世話になっている亀さんに嘘をつくのは後ろめたいが、
仕方なく適当な理由を考え返答した。
「明絖に来たのは…家業を継ぐ前に一度都会を味わってみたかったんです。
お金をかけずに入学出来る東京の高校を探していて…
特待制度があるから受験したら受かっちゃったので来ました」