ラベンダーと星空の約束
 


「へぇー、そんな理由だとは思わなかったな。

うちの高校の生徒はほぼ全員、進学希望者だから驚いたよ」



「あの、進学しないとそんなに変ですか?

この前の進路調査で、先生にも絶対に大学に行けって言われて…行かないですけど」



「変だとは言ってないよ。
驚いたのは悪い意味じゃないから誤解しないで欲しい。

家業を継ぐから大学には行かないと、キッパリ言い切る君の決断力に感心してるんだ。

普通は周りにやいやい言われると決意が揺れるものだろ?

君は清々しい人だよな。
俺は君のそういう迷いのない精神が好きだよ」





『清々しい人』
『迷いのない精神』


亀さんはそう言って、
眼鏡の奥の知的な瞳を細め、優しい兄の様に私を見てくれた。



褒めてくれるのは嬉しいけど、
残念ながら私はそんなに潔い人間じゃない…



大樹を選んだのにまだ心は流星を求めて…

それを押し殺すのに今も苦しんでいる…



流星の周りに集まる女の子達に醜く嫉妬したり…

どろりとした負の感情は
清々しいとは程遠い。



亀さんの褒め言葉を心の中で否定していると、

私達の会話を聞き取ったらしい瑞希君が、驚きの声を上げた。




「亀さん!? 紫ちゃんの事好きだったの!?
うっそーー!!」



「瑞希…違う。変な誤解は止めてくれないか。

月岡さんの迷いのない精神が好きだと言ったんだ。

俺が彼女に惚れたら色々と問題あるだろ?

月岡さんの事は可愛いと思っているが、俺は流星も同じ様に可愛いと思っているから。

だから誤解すんなよ?流星」



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