ラベンダーと星空の約束

 



 ◇◇◇


[side 流星]



「毎度ありがとうございましたー!」



配送業者が元気な挨拶を残し出て行った後も、

寒い玄関の上がり口で、凍りついたまま動けずにいた。



代理で受け取った荷物は、ゆかりちゃん宛ての物だった。



荷物の受け取りや郵便物の仕分けは亀さんがやっているから、

彼女の名前や住所が印字された物を、目にする機会がなかった。



初めて目にした
彼女宛ての荷物……



白い小さな箱に『割れ物注意』のシールと共に貼られた配送伝票には、

お世辞にも綺麗と言えない筆跡でこう書かれていた。



――――――――――――

[お届け先]


おところ:

東京都国立市××××


おなまえ:

  月岡  紫  様


――――――――――――

[御依頼主]


おところ:

北海道 空知郡
中富良野町××××


おなまえ:

  大原  大樹  様


――――――――――――




『紫』

『富良野(フラノ)』




その文字を目にした途端、
衝撃が走り抜けた。


驚き過ぎて、思考も呼吸も鼓動も…身体機能の何もかもが停止してしまった様に感じた。



しかし、すぐに心臓がドクドクと大きな音を立て始める。

それに伴い思考力も復活した。



大樹は隣に住む幼なじみ…ということは、

彼女の実家の住所もフラノ…


それから…彼女の名前は平仮名じゃなく…『紫』


“紫”と書いて
“ゆかり”と読む……



平仮名だと思っていたんだ。

連絡先を交換した時に、赤外線通信で俺のスマホに入ってきた名前は

『月岡 ゆかり』だったから。


何故『月岡紫』と入力しなかったのか…

それは…俺に知られたくなかったからだ。



素性を隠し

「紫(ムラサキ)ちゃんなんて知らない」

と嘘を付いていたんだ……



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