ラベンダーと星空の約束
3
◇◇◇
[side 流星]
「毎度ありがとうございましたー!」
配送業者が元気な挨拶を残し出て行った後も、
寒い玄関の上がり口で、凍りついたまま動けずにいた。
代理で受け取った荷物は、ゆかりちゃん宛ての物だった。
荷物の受け取りや郵便物の仕分けは亀さんがやっているから、
彼女の名前や住所が印字された物を、目にする機会がなかった。
初めて目にした
彼女宛ての荷物……
白い小さな箱に『割れ物注意』のシールと共に貼られた配送伝票には、
お世辞にも綺麗と言えない筆跡でこう書かれていた。
――――――――――――
[お届け先]
おところ:
東京都国立市××××
おなまえ:
月岡 紫 様
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[御依頼主]
おところ:
北海道 空知郡
中富良野町××××
おなまえ:
大原 大樹 様
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『紫』
『富良野(フラノ)』
その文字を目にした途端、
衝撃が走り抜けた。
驚き過ぎて、思考も呼吸も鼓動も…身体機能の何もかもが停止してしまった様に感じた。
しかし、すぐに心臓がドクドクと大きな音を立て始める。
それに伴い思考力も復活した。
大樹は隣に住む幼なじみ…ということは、
彼女の実家の住所もフラノ…
それから…彼女の名前は平仮名じゃなく…『紫』
“紫”と書いて
“ゆかり”と読む……
平仮名だと思っていたんだ。
連絡先を交換した時に、赤外線通信で俺のスマホに入ってきた名前は
『月岡 ゆかり』だったから。
何故『月岡紫』と入力しなかったのか…
それは…俺に知られたくなかったからだ。
素性を隠し
「紫(ムラサキ)ちゃんなんて知らない」
と嘘を付いていたんだ……