ラベンダーと星空の約束
 


微動だにせず、尚も記憶の中を探し続けていると、

ふと彼女の視線が俺から外された。



彼女が視線を向けたのは…
瑞希か…?



瑞希は俺の手の中の配達物を指差し、何かを伝えていた。



それを見て…

彼女は両手で口を覆い、
声にならない驚きの声を上げる。



「どうしよう」とか「ヤバイ」とか、

そんな言葉で形容出来ない程の焦りを、彼女は全身で表していた。



焦りの後は、何かに怯え小さく震え出す。



彼女の怯えが俺の意識を引き戻した。

あの夏の探求は一時中断され、深みから今この瞬間に戻ってきた。




そうだ…まずは彼女を問いただし、

自分が“紫(ムラサキ)ちゃん”だと認めさせなければ…




震える彼女との間合いを詰めた。

目の前に、彼女の氏名と大樹の住所が書かれた配達物を突き付ける。




「ゆかりちゃん、何これ…
どういうこと?


“月岡…紫”

ゆかりちゃんの名前…
“紫”って書くの?

北海道のどこに住んでるのか教えなかったのは、フラノに住んでいたから?

君は…紫(ムラサキ)ちゃんなの?」




「あ…」





彼女は俺の問いに答えなかった。

酷く動揺し、大きな瞳から今にも涙が溢れそうだ。



今は…泣かせてゴメンなんて言う気は更々なかった。


むしろ答えない彼女に苛つき、
潤む瞳を強く睨みつけた。



もうバレてんだよ…

何で隠すんだよ…


俺は真剣に紫(ムラサキ)ちゃんを求めてきた。

それを君にも話しただろ?

俺の本気の想いは、
君には届いていなかったのか?




「何で…黙ってんのさ…

答えろって…なぁ…

もう隠さないでくれよ!!」




「あっ…キャア!」





彼女の肩を掴み、
後ろのベットに仰向けに押し倒した。



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