ラベンダーと星空の約束
答えないのなら、
自分の目で確かめる。
体育祭の日、白いテニスウェアの胸元に、淡い紫色の光りを映していた、あのペンダントトップを。
あの時はすぐに否定した仮定のストーリーが、
今ぐっと真実味を帯び、頭の中の原稿用紙に再び綴られて行った…
彼女の胸元に下がるのは、母さんの形見の…
“紫水晶の指輪”
5年前のあの夏、
俺は彼女に指輪を預けた。
再会の日に返してもらうことを約束して…
彼女は5年間指輪を大切に持っていてくれて、
俺がこの高校にいることを知り、約束を果たす為会いに来てくれた…
何で隠していたのかは分からないけど、
この仮定のストーリーは仮定じゃなく真実なんだろ?
事あるごとに服の胸元を握りしめる仕草…
初めはただの癖かと思っていたけど、アレには意味があったんだ。
彼女の物問いたげな視線をかわそうと、わざとエロイ事を言った時…
彼女に想いを告げた時…
俺じゃなく、大樹の想いに応えたいと言った時…
大樹を選んだ筈なのに、まだ熱い眼差しを俺に向けていた時…
俺に関する何かで彼女の心が揺れる時には、いつも服の胸元を握りしめていたんだ。
「落ち着け」と自分に暗示を掛けるかの様に。
彼女が握っていた物は、ただのペンダントトップじゃない。
それは恐らく…
今確かめる必要があった。
もう隠されるのは御免だ。
彼女の白いセーターと、その下に着ているキャミソールの裾を掴み、
両手で一気に首元まで捲り上げた。
瑞希、亀さん、たく丸さん、
慌てた3人に羽交い締めにされる。
それでもしっかりと見た。
滑らかな白い胸元に鎮座する
それは…
紫色に輝く小さな石を付けた、
金色の指輪…
見間違えたりしない。
それは確かに…
「母さんの…指輪……」