ラベンダーと星空の約束
 


大樹が紫に付けた鎖。

それを外したからと言って、大樹の彼女である事実が変わる訳ではないが、


枷(カセ)を外したら、
素の心を見せてくれるんじゃないかと思ったんだ。



外したブレスレットをズボンのポケットにしまい込み、

再び彼女の手を握ると、ゆっくり顔を近付けた。




「流星…あっ…待って…」



唇が触れる寸前に彼女は俺を止めた。




「紫…君の本心を聞かせて?

誰を傷付けるとか、この先どうしたらいいとか、
そんな事は考えずに裸の心を見せてよ…

君の心は誰を求めてる?
君が好きなのは誰?」




「好きなのは……」




「紫が恋をしているのは誰?」




「流星……流星を……

5年間ずっと流星を想ってきたの…


生きていてくれて嬉しかった…

逢えて嬉しかった…

私をまた好きになってくれて嬉しかった………………………

流星が好き!流星の全てが欲しいの!流…んっ!」





紫の告白の途中で、唇を重ねて言葉を遮った。



泣きそうな程嬉しい言葉の後に

「だけど…」なんて付け加えられたら、辛過ぎるから。



紫の唇を押し開き、深く深く口づける。



彼女の息遣いが速く熱くなって行く。



唇の隙間から漏れる甘い声…

応えてくれる舌先…

首に回される細い腕…



その仕草の一つ一つが愛しくて、脳が快感に痺れて行く。



唇を合わせながら彼女の背中に手を当て、ゆっくりと体重を移し、ベットに倒した。



彼女の服を1枚ずつゆっくりと脱がせ、体中にキスをして、耳元で愛を囁いた。




愛してる…


出会えて良かった…


心臓移植を受ける事ができて…
生きていて…良かった…


再会できて良かった…




龍さんが貰う筈だった心臓は、今俺の中で、熱く…速く…親密なリズムを刻んでくれる。



龍さんの分まで生きたいなんて、ムシがいいと言われるかも知れないが、


彼があの時言ってくれた様に、
俺は俺の人生を精一杯生きようと思うんだ。



もう逃げたりしない。
真剣に生きる事と向き合いたい。



紫と一緒に
時を刻んで行きたいから…




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