ラベンダーと星空の約束
 


可愛い寝顔を暫く眺めてから、服を着た。


その上にコートを羽織り、
床に落ちていた紫のスマホを手に、静かに廊下に出た。


豆電球の灯る暗い廊下は深々と冷え込んでいて、コートを着込んで正解だった。



紫のスマホを借りた理由は、大樹に電話を掛けること。



話し声で紫が起きてしまわない様、亀さんやたく丸さんにも迷惑をかけない様、玄関まで移動することにした。



長い廊下を足音を立てずに静かに歩く。



たく丸さんの部屋の明かりは消えているが、亀さんの部屋は光りが漏れていた。



瑞希に説明を頼んでしまったが、どう思っただろうか…



受験前に厄介事に巻き込み申し訳ないな。



その事について今謝ろうかと、亀さんの部屋の前で足を止めたが、すぐに思い直した。



急いだ方がいい。

大樹との話し合いは長い物になるかも知れないし、

紫が深い眠りについている内に、済まさなければならない。



亀さんには明日改めて謝罪する事にして、

105号室の前を素通りし、玄関に足を踏み入れた。



真っ暗な空間で靴棚の横の壁にもたれ、紫のスマホを操作する。



通話履歴を開くと、殆どが大樹と交わした通話だった。



分かってはいても、こういうのを目にすると妬いてしまう。



大樹は紫にとって、ただの幼なじみ以上の大切な存在。



恋にはならなくても、
紫の心の重要な部分を占める、必要不可欠な存在。



今日は半ば強引に彼女に俺を受け入れさせたが、

大樹と話しをつけないと、心から向き合えないだろう。



紫は二股なんて掛けれる女じゃないから、きっと大樹に昨日の出来事を話そうとする。



大樹に話そうとして…また苦しむんだ…

夏休みの終わりに、俺を振った時の様に……



あの時電話口から聞こえた紫の声は、泣いているかと思う程震えていたんだ。



振られた俺は、すぐに優しい言葉をかけてあげられなかったけど、

あの時、紫は確かに傷付いていた。

もしかすると、振られた俺以上に……



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