ラベンダーと星空の約束
二度とあんな思いをさせたくない。
紫なら自分の口から伝えたいと言うだろうが、
俺としては、そんな辛い役目を彼女一人に押し付けたくなかった。
俺の力で紫の望む未来を作ってあげたかった。
口には出さなくても紫の望みは感じられる。
その望みとは…
俺と恋人として向き合うこと。
大樹とは、家族の様な親友の様な関係に戻ること。
大樹が「自分を振るなら一生避ける」なんて言わなければ、
紫はとっくにこの望みを叶えていただろう。
大樹の必死さも理解できるが…何とか堪えて彼女を自由にして貰えないだろうか…
紫の為に…
本当の所…彼女の為と言うのは詭弁で、俺の為に過ぎないのかも知れないが…
「紫と別れ、親友として、家族として、幼なじみとして、変わらず支えてあげて欲しい…」
こんな希望を大樹がすんなり受け入れるとは思えない。
それでも俺達は話し合わなければならない。
紫の心からの笑顔がみたかった。
あの夏の様に、何の憂いもない眩しい笑顔を…
俺が話しをつけないと…
逆上され話し合いにならない事態に陥らない事を願いながら、紫のスマホから大樹に電話を掛けた。
コール音が10回鳴っても応答が無い。
もう寝てしまったか…掛けるのが遅かったか…
そう危ぶんだ時、やっと繋がり緊張が走った。
電話口からは、5年前の少年の声とは違う、低い男の声が聞こえてきた。
低いけど温かい声。
大分前にカラオケ店で
「ぶっ殺す」と言われたが、
その時とは比べ様もない明るく穏やかな声で、大樹は紫に向けて話し掛けていた。
話しの内容には苦笑してしまったが……
「悪い、今ラスボスと格闘中だからさ、15分待ってろ。かけ直すから」
「………」
「紫? 何黙ってんだ?
急ぎの用か?」
「ゲーム中に悪いけど、
中断して話しを聞いて貰えないかな」
「…… 誰だ?
お前…まさか流星か…?」
「ああ。
大樹、久しぶり」