ラベンダーと星空の約束
聞こえていたゲームの背景音が消えた。
ラスボスとの闘いより、
俺の話しを優先してくれて有り難い。
だが、期待する話し合いは難しそうだった。
大樹の声はいきなりドスの効いた喧嘩口調になり、
無理もない事だが、かなり敵対視されているのをすぐに感じた。
「何でてめぇが紫のスマホ使ってんだよ。紫はどうした?」
「彼女は今、俺の部屋で眠ってる。
君と話しがしたいから、スマホは無断で使用させて貰った」
「てめぇ…紫に何かしたんじゃねーだろーな…」
「感情的にならないで聞いて欲しい。
思い出したんだ。5年前の夏の、フラノで過ごした全てを。
君の事も思い出した」
「だから何だってんだよ…紫はやらねーぞ。
今すぐ紫を起こせ。電話を代われよ」
「大樹、頼むから冷静に聞いてくれ。
怒りの感情は何の解決策も生み出さないよ。
君だって紫には幸せになって貰いたいだろ?
彼女を苦しめたくないなら、俺達が話し合うしかないんだ」
「何を話し合えって?
紫は俺のもんだ。てめぇが何を思い出そうが知った事じゃねー。
早く紫を起こせ。何でてめぇの部屋で寝てんだよ」
やっぱり話し合いにはならないか…
どうするかな…
電話だと切られる事を心配し、余り強く諭せない。
直接会って話すしかないか……
「3日後の冬休み初日、紫は実家に帰ると言っていた。
彼女の帰省の前に、君と2人で会いたい。
明日か明後日、フラノまで行くから、話しを聞いてくれないか?」
「ざけんな。俺はてめぇと話す気ねーよ。
勝手に来たって絶対会わねーからな」
「分かんない奴だな…
俺達で解決策を見つけないと、紫が苦しみ続けるだろ?
君は紫の気持ちが分かんないのか?
頼むから会ってくれ」
「てめぇに紫の何が分かるんだよ…
話し合い?解決策?
苦しめてるって言うなら、てめぇが紫の前から消えればいいだけの話しだろ。
紫を起こして自分の部屋で寝ろって言っとけ。
これ以上話す必要はねーから切るぞ」