ラベンダーと星空の約束
こんな中途半端な状況で通話を切られたら最悪だ。
例え紫のスマホからかけ直しても、今日は出てくれないだろう。
明日の朝、何の解決策も見出だせないまま、彼女に大樹からの電話を取らせる訳にはいかない。
今にも通話を切ろうとしている大樹に、仕方なく逆鱗(ゲキリン)に触れる言葉を伝えた。
「紫を抱いたよ」
「あ゙…? 紫がそんな事するわけねーだろ。嘘つくんじゃ…」
「信じないならそれでも構わないが、事実は変えられない。
紫はさっきまで俺の腕の中にいて、今俺のベットで寝ている。
俺を受け入れる方向に導いたのは否定できないが、
それでも彼女は俺を好きだと言い、体を開いてくれた。
ああ、そういえば紫の太ももの内側に小さなホクロがあるよね。知ってた?」
「……流星…許さねぇ…ぶっ殺してやる!!
今からそっちに乗り込むから、頭洗って待っとけ!!」
耳が痛くなる程、怒鳴り付けられ、通話は切られた。
はぁ…頭洗ってどうする…
それを言うなら「首を洗って」だろ……
最初は「抱いた」なんて言うつもりはなかった。
別に大樹が嫌いな訳じゃないし、
紫の為にもなるべく傷付ける様な発言はしたくなかった。
だけど電話で話し合うのは無理そうだし、
フラノに出向いても会ってくれなそうだから、
大樹から俺に会いに来させるしかなかったんだ。
今から乗り込むと言ったが、もうすぐ日付の変わる夜中に飛行機は飛ばない。
明日の空席のある一番早い便で来るだろう。
ポケットから自分のスマホを出し、“新千歳空港発羽田行き”で、全ての航空会社の明日の空席状況を調べてみた。
早朝の便はどれも満席で空きはなく、今からネット予約で取れる一番早い便は…10:55発。
恐らく大樹はこれに乗る。
羽田に到着時刻は12:30。
そこから柏寮まで電車乗り継ぎかバスで来るのか分からないが、
所要時間は1時間半から2時間をみておけばいいだろう。
とすると、柏寮に着くのはどんなに早くても14:00以降になるな。
大樹と話しをつけるまで、紫とは会わせたくない。
また迷惑かけるが、瑞希に頼み彼女を外に連れ出して貰うか……