ラベンダーと星空の約束
意味が分からない。
ツーツーと鳴り続ける通話終了の機械音を聴きながら、素早く頭を回転させる。
「お前の部屋何号室」
それを聞くためだけに掛けてきた…
その意味は何?
部屋番号だけ聞いて即切られたことだけじゃなく、
引っ掛かっていることが、
もう一つあった。
電話口から響く背景音…
ギィッと古いドアを開ける、軋んだ音が聴こえていた。
それは私にとって馴染みのある音だった。
毎日2回は必ず聞いてる
その音は…
柏寮の古い木製の
玄関ドアの音……
「まさか…そんな…」
「まさか」と思ったけど、今日引っ掛かる事だらけだった理由が、
急浮上した推測に次々と結び付き、やがて確信へと変わって行った。
通話履歴が一件足りなかったのは、流星が大樹に連絡し、柏寮に呼び寄せたから……
大樹のスマホの電源が切られていたのは、飛行機に乗って東京に向かっていたから……
瑞希君が突然クリスマスデートしようなんて言い出したのは、
私が大樹と会わない様に、流星に頼まれていたから……
瑞希君が言い掛けて止めた『迷惑料』の意味は、
今までの迷惑分じゃなく、
これから私を連れ出す役目の迷惑料だった……
流星は私を抜きにして、大樹と話しを付けようとしていたんだ…
きっと…私の為に……
大樹によって切られた、通話終了の機械音。
そのツーツーと言う音を4回聞く間に、それらの思考を巡らせていた。
冷汗が背中を伝う。
5回目のその音を聞く事なく、慌ててスマホを置き立ち上がった。
部屋のドアを急いで開けるとそこには…
静かに佇む大樹の姿があった。
「大…樹……」