ラベンダーと星空の約束
振り向く大樹。
静かな怒りが溢れる眼差しでじっと私を見つめ、
それからくわえていた矢を外すと、やっと答えてくれた。
「今日…試合があんだよ…」
「嘘だよ! 大樹は道内の試合しか出ないじゃない!
ねぇ、お願い。変なこと考えてるなら止めて?」
「変なことじゃねぇ…大事なことだ。
そうか…お前には見せらんねーな…
紫…悪いけど少し眠ってくれる?」
「あっ やっ…」
強い力で壁に押し付けられた。
顔が近づき、強引に唇を重ねられた。
その直後に強い衝撃を鳩尾(ミゾオチ)に感じ、息が止まった。
大樹の顔が見えなくなる。
意識がプツリと途絶え、闇の中に落ちてしまった。
◇
意識を失っていたのは、恐らく数十秒の僅かな間だけ。
真っ暗な闇の中でも、危機意識が働き、
「起きろ」「寝ていてはダメだ」と叩き起こされた。
ハッとして目を開けると、
目に入ったのは廊下の床板。
それと同時に、大樹の怒号が寮内に響き渡る。
「出て来いっ! 流星っ!!」
今まで聞いたことの無い恐ろしい大樹の声に、ビクッと大きく体が震えた。
ダメ…大樹……
「 うっ…」
殴られた鳩尾を押さえ上体を起こして前を見ると、
弓矢を片手に下げ、階段下を真っすぐに見下ろす、大樹の姿が目に入った。
一階のあちこちでバン、バンと部屋のドアが勢いよく開く。
続いてバタバタと走る足音が、階段下に集まってきた。
ダメ…大樹…
お願い…止めて…
鳩尾を押さえ、よろよろと立ち上がろうとし、目眩を感じ床に両手を付いた。
「よう、流星…
5年振りだな。相変わらずムカつく面しやがって……
そこ、動くんじゃねーぞ」