ラベンダーと星空の約束
3
◇◇◇
「紫ー 荷物こんだけでいいのか?」
「いいの。大きい物は寮に直接送ったから」
「じゃあ、車に乗れ。もう出発すっぞ」
いよいよ出発の日。
札幌で行われる弓の射会を見て、
それから午後の便で新千歳空港発の飛行機に乗る予定。
早朝、大樹の父親の車に乗り、私と大樹はフラノを出る。
家族と離れるのは思っていたよりも淋しい。
いつも生意気な弟の青空なんて、
「さっさと行けよ…姉ちゃんのバーカ…」
そう言いながら目を潤ませていた。
こんなに可愛い弟を見たのはいつ以来か…
嬉しくなって抱きしめて頬っぺにチューすると、思いっ切り嫌がられてしまった。
走り出した車は軽快に…とは行かずノロノロ運転だ。
3月末、道路にまだ雪が残っているため、札幌までは三時間近く掛かってしまう。
大樹は「着いたら起こせ」と言い、
私の隣でシートにもたれ目を閉じてしまった。
大樹の父親に私も寝てなと言われたけど、
何だか妙に気が張って眠れそうになかった。
曇った窓ガラスを手で拭いて、流れる薄暗い景色をぼんやりと眺めていた。