ラベンダーと星空の約束
 


驚いた事に、1階廊下に今まで無かった手摺りが取り付けられていた。



右麻痺の私は左側に支えがないと歩けないので、

一人で往復できる様、ちゃんと廊下の両サイドに付けてくれている。



しかも手摺りが途切れない様に各部屋のドアにも付けてあるし、

階段に続く空間まで無視して、玄関から突き当たりまで一直線に取り付けてくれている。



荷物を部屋に置いて戻ってきた瑞希君が、

驚く私に得意気に説明してくれた。



「3日間、柏寮総出で手摺りを手作りしたんだよ。

材料の出資者は大ちゃんだけど、切ったり釘打ったり、ヤスリかけたりネジ締めたり、

君の為に、柔肌の僕も頑張ったんだから褒めてよね」




支えの流星の手を離し、手作りの手摺りに掴まり歩いてみた。




「歩ける…病院の手摺りと変わらないよ。

いや…病院より歩き易い気がする。

ありがとうみんな…」




これだけで十分嬉しかったのに、シャワー室とトイレを見てもっと感激した。



シャワー室は滑り止めのマットが敷いてあり、

手摺り代わりにもなる、介護用の背もたれ付きお風呂椅子が置いてあった。



トイレ内にも手摺りが付けてある。



これなら流星と一緒じゃなくても、シャワーもトイレも一人で入れそうな気がする。



喜ぶ私を見て流星は、


「しまった。

シャワー室はそのままにしておけば良かった。

一緒に入りたかったな〜」


なんて言ってたけど、
その顔は私と同じく、嬉しそうに笑っていた。



最後に新しい私の部屋を案内された。



今までは2階の210号室が私の部屋だったけど、

流石に階段は無理なので、1階に部屋を移して貰っていた。



流星は

「俺と同じ部屋で生活すれば…」

と言ってくれてたけど、


それはまだ早いと言うか…
ドキドキして落ち着けないと言うか…



付き合い始めてまだ1ヶ月。

私だって一応恋する乙女だから、好きな人には見られたくない面もある。



年期の入った夫婦の様に、阿吽(アウン)の呼吸を手にするのは、まだまだ先の話しでいい。



今は恥じらいとか、ときめきとか…
そういう初々しさを無くしたくない。



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