ラベンダーと星空の約束
初恋は忘却の彼方に
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◇◇◇
大樹の弓道姿を目に焼き付けた後、昼過ぎの飛行機で東京へと飛び立った。
入試で来た時は、電車の切符の買い方や複雑な路線網に戸惑ったけど、
今日はすんなりと目的地にたどり着いた。
それでも出発が遅かったため、明絖大附属高校に着いた頃には17時を回っていた。
伝統ある古びた校舎が、夕暮れのオレンジ色の光に包まれ綺麗だった。
春休み中の今、校舎前に人影は見られないが、
校庭には部活動に励む生徒達の元気な声が響いていた。
フェンス越しにその生徒達を眺めながら、校庭に面した歩道を歩く。
そこから細い車道を一本渡ると、私が今日からお世話になる女子寮
『柏(カシワ)寮』に着いた。
特待生の待遇は学費免除だけでなく寮代もタダ。
これは見逃せない。
一もニも無く入寮を即決した。
築50年は経っていそうな古びた木造二階建て、横長の建物。
周りが近代的なマンションに囲まれる中、
そこだけ昭和で時が止まって見える。