ラベンダーと星空の約束
中に入ると玄関から奥までが真っすぐに見通せた。
一本の細長い廊下に沿って、向かって左側、等間隔に個室のドアがズラリ並んでいる。
右側は庭に面した開口の広い窓が並び、
そこから夕暮れの光が斜めに差し込んでいた。
玄関の右横には靴棚。
個別に別れてはいなくて、共同で使用するようだ。
新年度がまだ始まっていない今、寮生達は外泊か外出しているのか、
寮内に人が少ない事は靴棚を見れば分かった。
5段の広い靴棚には数足の靴しか入っていない。
その靴を見た時ふと違和感を感じた。
しかし…
それは疑問の形となって現れることはなく、すぐに意識下に沈んでしまった。
靴を脱ぎ静かな廊下に足を踏み入れると、床板がギィッと軋む。
微かな埃(ホコリ)の匂いと木目に塗られたワックスの匂い。
まるで古い田舎の校舎を思わせるその香りに、何となく安らぎと安心感を覚えた。
どこもかしこも古い。
でも室内は清潔で、定期的に掃除はされているようだ。
「えーと… 105号室ってどこかな?」
寮母さんの様な常駐の管理者はいないらしく、
学校の事務の人から105号室の寮長さんに、部屋の鍵を貰うように言われていた。