ラベンダーと星空の約束
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◇◇◇
東京の7月の終わり、連日30度超えの真夏日が続いていた。
暑さに弱い私は、期末テストを目前にしても授業に身が入らず、ぼーっとしてしまう。
でも、ぼーっとしてしまうのは、暑さのせいだけじゃないかも。
去年とは違い、恋に悩む事もなく、平和な毎日にどっぷり浸っているからぼんやりしてしまうのだ。
そんな平穏な日々に掛かってきた一本の電話。
フラノの母からの電話に、ぬるま湯気分はたちまち吹き飛び、暫く悩む事になった。
『紫、夏休みいつからだっけ?』
「一週間後だよ」
『あーそれなら間に合うわ、
良かった』
「何が?」
『バイトの子が、急に7月いっぱいで辞めさせてくれって言うから困ってんのよ。
それも2人同時にだよ?
全く、こっちの都合もあるのに、近頃の若いもんは根性なくてダメだねー。
あんたもそう思わない?』
「お母さん、私だって、近頃の若いもんだよ…」
『あんたレジは出来そうだって言ったよね?
取り合えず今年も大樹に手伝って貰ってるけど、
あんたにあんまり負担掛けたくないし、後2〜3人欲しい所なんだよねー…』
「まさか……」
『そう! 流星ともう一人の…何だっけ?あの可愛い女の子』
「瑞希君だよ…男だからね?」
『そうそう、瑞希! その2人連れておいで。
3食布団付き、日給5千円でよろしく!』
「………」
この夏休み、流星と一緒にフラノに帰ろうとは思っていた。
でも、うちでアルバイトさせようなんて、微塵も考えていない。
流星も一週間位の滞在予定で、近くのペンションに宿泊して、
私が店に出ている間は、一人で観光でもするかな…なんて言ってた。
それなのに、母からの問答無用の頼み事を聞くとなると…
こう言う事態になるよね…
流星と瑞希君が約1ヶ月、うちで寝泊まりしながら店で働く。
当然店を手伝っている大樹と流星が、長時間同じ空間を共有する羽目になる。