ラベンダーと星空の約束
 



 ◇◇◇


夏休み初日、流星と瑞希君を連れ“中富良野町”に帰ってきた。



直前まで

「本当にうちでバイトするの? 止めた方が…」

なんて言ってた私だけど、

結果として2人と帰省して正確だった。



バスと電車と飛行機と…

フラノ迄の道程には、段差やエスカレーターや人混み、その他様々な障害があって、

今の歩行レベルで一人で出発していたら、フラノまで辿り着けなかったことだろう。



フラノバスを下りてから、家まで15分の道程も、

一人で歩く事を考えたら、一体いつ着くことか…



連れて行くと言うより、付いて来てくれた2人に感謝し、

バス停から家までの観光道路を、瑞希君に荷物を持ってもらい、流星に掴まり歩いていた。



15分の道程をひょこひょことプラス10分掛けて歩き、やっとうちの観光農園が見えた。



フラノは只今観光シーズン最盛期。



今年も見事に咲き誇る紫色のラベンダー畑と、澄み渡る青い空……



青々とした十勝岳連峰の山並みに、暴風林と野菜畑の緑……



色彩豊かな大地を見に来てくれた客人達で、ラベンダーの丘も、うちの土産物店も活気に溢れていた。




ファーム月岡の敷地に入ると、瑞希君が感嘆の声を上げた。




「うわー!壮観だねー!
ラベンダーの絨毯すっごい綺麗!

ここが大ちゃんと紫ちゃんの、出会いの舞台なんでしょ?」




「ああ…懐かしいな…
何も変わってない…」





瑞希君は初めて訪れたフラノの景色に感動し、

着いたばかりなのに、デジカメを取り出し、シャッターを押しまくっていた。



流星は一人で白樺並木まで歩いて行き、

6年前に背をもたれていた白い木肌にそっと触れ、

そこから静かにラベンダー畑を見つめていた。




瑞希君は初めての紫色の海に、

流星は6年振りの懐かしい想い出の景色に…


感慨に耽りたい気持ちは分かるけど、いつまでもそうさせてあげれない。



2人にも今からすぐ、仕事に入って貰う。



< 496 / 825 >

この作品をシェア

pagetop