ラベンダーと星空の約束
2人を呼び、まずは自宅に入った。
荷物をリビングに置く。
部屋を見回している2人に、お店用エプロンを手渡す。
「瑞希君、髪型それじゃダメなんだ。
髪の毛が前にきちゃって食べ物に入っちゃうから、後ろで一つ結びにして?」
「えー? ツインテールは僕のチャームポイントで、ポリシーで、人生のテーマなのにダメなの?」
「うんダメ。
お店の中では、ポリシー曲げて、人生のテーマも変えてね」
「うあ〜厳し〜
紫ちゃんアレみたい。
か弱い新人OLをいびる、社内のお局的な恐いおばちゃん」
「…… 真面目にやらないと給料払わないよ?」
「ごめんなさい…」
瑞希君が慌ててツインテールを解き、ポニーテールに結び直したのを見て、私もヘアゴムを出した。
流星に「お願い」と言って手渡し、肩までの髪を後ろで一つに結わえて貰う。
髪を結うには両手が必要。
左手生活に慣れても、やっぱり出来ない事は結構ある。
だから本当は、私がお店に出ても邪魔にならないか、不安だった。
レジは打てるし会計は出来ると思うけど、
商品の袋詰めやラッピングは、きっとモタモタしてしまう。
不安だけど…
母にはレジ前は出来るから任せて欲しいと自分から言った。
お荷物になりたくない。
私も家族の役に立ちたい。
出来ないなんて…言いたくない…
緊張と不安が入り混じり、黙り込んでいると、
私の髪を結い終えた流星が、前に回り込み、顔を覗き込んだ。
薄茶色の綺麗な瞳が私をまっすぐに捕らえ、ふっと柔らかく微笑んだ。
手を取り、優しく握りしめてくれる。
「紫…力が入りすぎてる。
看板娘がそんな顔してたら、観光客の楽しさは半減するよ?
ほら、笑ってよ。
ここは君が一番輝ける場所だろ?
6年前みたいに眩しい笑顔を見せて?
大丈夫一人じゃない、みんな君の味方だよ」
「流星……うん、そうだったね…私また皆に頼る事を忘れてた。
ありがとう…頼りにしてるよ…流星…」
「ん、それでいい」