ラベンダーと星空の約束
 


ブツブツ文句を言った後、
青空は、私の後ろの流星に視線を向け、ペこりと頭を下げた。



それから瑞希君を見て……

固まって、瞬時に耳まで真っ赤になった。




「青空?」



呼びかけるとハッとした顔して、慌てて向きを変え、客席へと料理を運んでいる。



何、今の反応……

青空は瑞希君が男だって知ってるのに、何で赤くなるの?




「瑞希君…青空に何かした?」



「挨拶代わりにウインクと投げキッスしてみただけだよ〜

さすが紫ちゃんの弟だけあって可愛いねー。

反応面白いし、楽しめそー!」




「弟を変な道に走らせないでね…」




心配事が一つ増えた。


流星と大樹、それから父との関係を気にするだけでなく、

瑞希君から青空を守らないと…




調理場で働く母に軽く挨拶して戻ると、

大樹が重たいビールケースを肩に担ぎ、入口から入って来るのが見えた。



大樹が私に気付く。

嬉しそうに笑みを浮かべた後、後ろの流星に視線をずらし、明らかに嫌そうな顔をした。



ああ…やっぱりね…

私を諦め、流星との仲を認めてくれたとは言え、

大樹が私を好きな事実は変わらない。



自惚れなんかじゃなく、大樹は一生私を好きだと思う。



私の為に、今は恋心を押し殺してくれてるけど…



分かってるよ…

流星と私が一緒の場面は…やっぱり辛いよね…




後ろの流星をチラッと見上げる。

流星も大樹にまっすぐ視線を向け、口元は笑っているが、若干眉根が寄ってる気がする…



大樹に比べたら、感情を隠そうとしてくれるけど、

流星まで複雑な顔して…




病院のICUで3人で話しをした時、

大樹は

『笑って一生親友で弟をやってやる』

と言ってくれた。



流星も

『セットメニューの紫に惚れたから、今更離れると言われても困る』

と言ってくれた。




あの時は3人で笑い合っていたけど…

やっぱり無理なのかな……




この2人は水と油。

今年の夏休み、私は円形脱毛症になるか、それとも胃潰瘍になるか…



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