ラベンダーと星空の約束
 


不快感を顔に出す大樹が、肩にビールケースを担いで、ゆっくりと近付いてきた。



目つきは鋭く流星を睨みつけ、
流星は黙ってその視線を受け止めていた。




「あらら〜
第二次三角関係、泥沼戦争勃発?」



そんな恐ろしい事を平然と言う瑞希君の声に、嬉々とした響きを感じるのは気のせいだろうか…




大樹がどんどん近付いて、
それに合わせて、私のハラハラも増していく……



私の真横、流星の斜め前で大樹は足を止めた。



そのまま2人は視線をぶつけ合い、無言の時間が静かに流れていた。




一触即発に成り兼ねない張り詰めた空気に、

堪らず私が「あのね…」と口を開きかけた時、

2人は同時に吹き出し、笑い始めた。



周りのお客さん達が振り返る程の爆笑っぷり。




え…何笑ってんの?
意味分かんないよ…



呆気に取られる私を見て、2人は更に笑いを大きくする。



大樹はお腹に片手を当てギャハハと笑うから、

肩の上の瓶ビールがガシャンガシャンと音を立てた。



流星は笑いを収めようと片手で口元を覆っているが、

抑えようとしても抑え切れない笑い声が、喉の奥から漏れている。




「ねぇ…何で笑ってるの?
流星?大樹?」




そう聞くと、笑い続ける大樹が、私の肩をバシバシ叩く。




「痛いよ、大樹!」



「ハハッ悪い…ブフッ…お前の顔…ハラハラし過ぎなんだよバーカ…アハハッ!

俺の顔色伺うなんてお前らしくねー。

大丈夫だからもっと堂々としてろ。アハハッ」




大樹は私の頭に軽くチョップをかまし、笑いながらバックに消えて行った。



何あいつ…

わざとハラハラさせる態度を取って、私の反応を楽しんだって事?



大樹のくせに、私をからかうとはいい度胸じゃないか……




「紫、焦らせてごめん。本当に大丈夫だよ。

実は俺も、大樹と顔合わせるのに、少しだけ緊張してたんだ。

けど、今分かった。
大樹の中で問題はきっちり解決してるんだって。

あいつは思ったより強いな。
今なら仲良く出来そうな気がする」



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