ラベンダーと星空の約束
 



野菜を切り終わり、ホットプレートの鉄板が温まった頃、

「ただいまー」と、うちの家族3人が一緒に帰ってきた。



夏休みの二大心配事の一つは、父が流星を認めるかどうかという事。



父はラベンダー畑の中で仕事しているから、

お店の中にいた流星と、まだ会話していない。



結婚の申し込みに来てる訳じゃないけど、

それに似た緊張感を、流星も私も抱いている。




廊下から聞こえる家族の足音に、流星の表情が固くなるのが分かった。



家族がリビングに姿を現し、流星が父の方に体を向けた。



しかし父は、流星と目を合わせる事なく

「風呂入ってくるから先に食べてろ」

そう言って、すぐにリビングを出てしまった。




一日中、外仕事の父。

家族の中で一番土にまみれて働くから、普段から夕食前にお風呂に入る事も多い。



だから、今のは流星を避けたのではなく、

ただ普通にお風呂に入りたかっただけ……

そう思いたい。




 ◇


4人掛けの食卓テーブルに、簡易椅子を2つ追加して並べた。



私の右隣りに流星が座り、角を曲がったその隣が母。



私の向かいは瑞希君で、私と瑞希君の間に青空が座った。



そして…

空いている席…
これからお風呂上がりの父が座る席は、瑞希君の隣で、流星の向かい…




「ほらほら、肉焼けてるよ。

焦げるから早く取っちゃって。

沢山買ってきてるから、どんどん食べてよ?」




母はそう言いながらも焼けた肉を自分で取り、

瑞希君と流星の皿に、ひょいひょい勝手に入れて行く。



瑞希君は可愛い頬っぺたいっぱいに肉を頬張り、


「紫ママ、僕ピーマンだけは食べられないから入れないでよ〜」


と、既にうちの食卓に溶け込んでいる。



母は


「うちの畑で取れたピーマンだから美味しいよ、食べなさい。

ダメ?それならピーマンだと思わないで胡瓜だと思いな、同じ緑だし」


ピーマン嫌いの人に無理を言い、アハハと笑い楽しそうだ。



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