ラベンダーと星空の約束
フラノに来る前は、挨拶しなければと意気込んでいた流星。
でも、そんな雰囲気を父が意識的に作らないようにしてるみたい。
どうしたらいいのか…
「お父さん聞いて!」
と、私が話しを持って行くべきか…
結婚の申し込みじゃないのに…
何でこんなに…
モヤモヤ考え込んでいると、流星と父が同時に1枚の肉に箸を伸ばした。
「すいません!」
咄嗟に謝り箸を引っ込める流星。
父は一言
「食べなさい」
と言って、流星の皿に肉を放り込んだ。
やっと交わした会話がそれ。
それでもやっと、話す機を掴めたみたい。
「あの…お義父さん!」
「あ゙?
お義父さん…だと?」
やっと話せたのはいいけど…
流星テンパり過ぎ……
本当に結婚前の挨拶みたいになり、益々父がピリピリしてるから…
「流星、落ち着いて!
“お義父さん”じゃなく、まだ“おじさん”でいいんだよ?
焦らないでいいからね?
お父さんも!
威圧しないで、流星の話しを聞いてあげてよ、お願い」
私の言葉に父は短い息を吐き出し、腕組みしながら流星をまっすぐに見据えた。
だから…威圧しないでって言ってるのに……
「おじさん、俺、紫…さんとお付き合いさせて貰ってます。
挨拶が遅くなってすいませんでした」
「………」
「おじさん、俺は…」
「流星、体はもう大丈夫なのか?
昔と違い、見た目には健康的に見えるが…」
「はい。もう何でも出来る体になりました。
…… 3年前に心臓移植を受けたので…」
「そうか…」
「あの、俺はこんな体ですが…」
「良かったじゃないか。
健康になれたんだろ?
こんな体なんて言うな。しっかり感謝しろ。
小さい時のお前は、青白い顔して本ばかり読んでいたもんな。
移植を受けられて何よりだ。
別に、娘との付き合いを反対はしとらん。
あのくそガキに頭を下げられたら…
大樹がそれでいいと言うなら、反対する理由は何一つない…」
「お父さん…大樹が頭下げたって…どういう事?」