ラベンダーと星空の約束
父が教えてくれた事に、胸が熱くなった。
私の入院中、東京からフラノに帰った大樹は、全てを父に説明していた。
私の腕の傷は、大樹の放った矢によるものだって事も。
父に土下座して謝罪した後、私と流星の付き合いを認めてくれる様、お願いしてくれていた。
知らなかった…
だって大樹は、そんな事一言も言わなかったから……
人に頭を下げ、謝ったり頼んだりするのは、大樹の苦手分野だ。
小さい頃、父にげんこつされても、悔しそうに唇を噛み締めるだけで謝らないから、余計に怒られる羽目になった。
そんな大樹がいきなり土下座し、謝罪とお願いをするなんて、父はさぞ驚いた事だろう。
「お父さん…ありがと…」
「紫パパ、カッコイイじゃん!
大ちゃん良かったねー!晴れて親公認だね!」
心からホッとした表情を浮かべる流星が可愛く思えて、少しだけ笑ってしまった。
流星の左手が、テーブルの下で私の右手をそっと握る。
冷たく汗ばんでいる流星の手。
物凄く緊張していた事が伝わり、顔を見合わせ笑っていた。
父も柔らかい表情になり、ビールジョッキに口を付け、満足気に私達を見ている。
「紫、お前、母さんにそっくりだな…」
「うん、顔はお母さん似って言われ続けてきたけど?」
「見た目だけじゃない。
一途な所がそっくりだ。
そんで、欲しい物をちゃんと手にする所もな。
母さんもかなりしつこかったからな……」
「え!?」
父がポロリと暴露した、母との馴れ初め。
今まで聞いた事がなかったし、想像した事もなかったけど、
まさか母からアプローチしていたとは驚きだ。
その話に食いつく青空。
酔って赤ら顔した父が、母に叩かれながら饒舌に喋り出した。