ラベンダーと星空の約束
女子大生の頃の母が観光でこの地を訪れた時、
ラベンダー畑で汗を流し働く父に、一目惚れしたらしい。
それから母は毎週末一人で車を運転して札幌からフラノに通い、猛アピールしていたと言う話しだ。
通い続けた期間は約1年…
片道夏は2時間、冬だと3時間。
時間もガソリン代も、物凄く掛かるよね…
「お母さんって…
パワフルだね……」
「何言ってんの、紫だって同じ事してんじゃない。
やっぱり血は争えないね。
あんた私にそっくりだわ」
半ば感心し半ば呆れて言った言葉は
「同じ」だと返された。
そして私以外の全員が一斉に頷いている。
そう…かもね…
確かに流星に逢いたくて、フラノから東京まで押しかけた私も…パワフルだ…
それからは和やかに楽しい夕食が続いた。
どれだけ買ってきたのか…
一袋二袋と味付けラム肉を空にしても、
母は次々と冷蔵庫から出してくる。
緊張が解けてホッとした流星が
「あっこの肉すげー美味い」
今気付いた様に、感想を口にした。
私も…夏休みの心配事が一気に片付き、心の底からホッとしていた。
大樹のお陰なのかな…
嬉しいけど、アイツのお陰って言うのは、悔しいかも…
◇
いつもより長い夕食が終わり、後片付けを母と私がしている間、
皆には順番にお風呂に入って貰った。
お風呂上がりの流星がリビングに戻ってきた時、大樹がやってきた。
「うわっ この家ジンギスカン臭せーな」
そんな事を言いながら、ズカズカと当たり前の様に入って来た大樹は、
持ってきた鞄の中からゲーム機を取り出し、リビングのテレビに接続し始めた。
キッチンから、大樹の背中に声を掛ける。
「ゲームなら青空の部屋でやってよ。
テレビが見れないじゃない」