ラベンダーと星空の約束
 


「こっちのテレビのがデカくて迫力あるんだよ。

それに、皆でやるんから、リビングでもいーだろ?」




「みんなでやるの?」




「流星来いよ。俺と勝負だ。

あっ、てめぇが勝つことねーから、勝負にはならねーか」




「… 大樹に勝てない訳がないだろ?

説明書貸して。3分で使い方覚える」




「僕もやりたーい!
何やるの?マリ〇カート?

あっこれ面白そー!大樹これからやろうよ!」





青空は入浴中。

父は500mLの缶ビールを5本空けて、ソファーでガーガー爆睡中。



そんな中、急に始まったテレビゲーム大会に、

瑞希君はともかく、流星までやる気満々だ。



流星は普段ゲームはしないから、ゲーム馬鹿の大樹に勝てる訳ないのに、やけに闘志を燃やしている。



以外と負けず嫌いなんだね。


相手が大樹だから?
それは有り得るかも。




今やっているのは、戦国武将が1対1で戦う対戦ゲーム。



2人の戦いを、キッチンからぼんやり見ている。



あ、思ったよりいい勝負かも…

そう思ったけど、違った。



大樹は途中まで手を抜き、わざと互角の戦いをして、

最後に一気に、こてんぱんにやっつけて楽しんでいる。



「ざまーみろ!」と悪態ついて、ギャハハと笑って……

大樹…性格悪くなったね……




母が洗った食器を、私が拭いて片付ける。


その手を止め、盛り上がるテレビ前を見つめていた。




「お母さん…」



「何?」



「あの2人…仲良しに見えるけど…気のせいかな?」



「仲良くしようとしてる様には見えるね。

あんたの為でしょ?

2人共、いい男に成長したじゃないの」



「うん…」





そうか…

私の為にバカ騒ぎしてくれてるのか…



流星も大樹も散々傷付け、苦しめてきたのに、

2人は今、目の前で、私の願いを実現して見せてくれている。



私には勿体ないくらいの男の子達。



流星、大樹、
ありがとう……




「何泣いてんのよ。

ほら、青空がお風呂上がったみたいだから、あんたも入っちゃいな。

後の片付けは、お母さんがやっとくから。

一人で入れるよね?
無理ならお母さんも一緒に入るよ?」



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