ラベンダーと星空の約束
「大丈夫、一人で入れるよ。
スタスタとは歩けなくても、かなり安定してきたから」
「油断したら転ぶからね。
気をつけなさいよ」
◇
お風呂から上がり、タオルで髪を拭きながらリビングに戻ると、
ゲームに盛り上がる男達の中に、流星がいなかった。
トイレ…?
そう思って廊下に目を遣ると、大樹がテレビ画面を見つめたまま
「アイツなら外行ったぞ」
と教えてくれた。
瑞希君がコントローラーを操りながら、ニヒヒと笑って大樹をからかう。
「大樹って思ったよりいい男だねー。
僕が女の子なら付き合ってあげてもいいけど、残念ながら心は男なんだよねー」
「るせーオカマ。
キモイ事言ってんじゃねー」
「オカマって言うなー!
あっまた負けたー…
何でー? さっきの技、何ボタンで出せるの?」
初めは行儀良く正座していた瑞希君。
今はミニスカートなのに片膝を立て、前のめりになりながら、大樹に何度も勝負を挑んでいる。
「瑞希君、お風呂空いてるよ?
入ってから、またゲームやったら?」
「あーそうだね、入っちゃうかな…… ねぇ、青空君。
さっきから、僕のスカートの中を気にしてるみたいだけどさ…一緒に入る?」
「え……あの…俺はもう風呂入ったんで……」
「気になるんでしょ?
本当に男なのか…
見せてあげるよ全裸…
もしかして女だったりしてね…」
瑞希君は色気たっぷりの流し目で攻撃した後、
ゴクリと喉を鳴らす青空の前で、ミニスカートの裾をゆっくり持ち上げ…
白い太ももを露(アラ)わにしていく……
「瑞希君っ!!
青空で遊ばないでよ!
この子、初恋もきっとまだだよ?
それなのに変な刺激を与えたら、『男でもいい』なんて言い出すかもしれないよ?
そうなったらどうすんのよ!
責任取って、うちにお嫁に来てくれるの?」
「ね、姉ちゃん…俺ノーマルだから…
男には絶対に惚れないから、変な事言うの止めてよ…
それに恋した事くらいあるから…」
耳まで真っ赤な青空を守って、瑞希君に釘を刺し、
大樹に瑞希君の監視を頼んでから、流星を追って外に出た。
「一緒に見ようね」
って言ったのに、待ち切れなかったのか…
それともゲームで大樹に負けて、悔しくて逃げてきたのか……