ラベンダーと星空の約束
大樹のTシャツの胸元から、慣れ親しんだ心安らぐ香りがした。
大きな背中に腕を回し、その手に力を込めた。
「どこまででかくなるのよ」と言いたくなる成長期の大樹。
その体の大きさに、ちゃんと心も追い付いてきたみたい。
「大樹の弓…凄く綺麗だった…
ありがとう…見せてくれて…嬉しい……」
「そうか…」
「続けてね。辞めたら嫌だよ?
大樹の弓道姿が好きだから……」
「おう…」
大樹の腕の中でそんな会話をしていると、
流星にベリッと引き剥がされ、横抱きに抱え上げられた。
「“今の紫”は俺のもの」
勝負に負けた流星が、勝ち誇った不敵な笑みを大樹に向ける。
大樹は横を向き舌打ちしていた。
「流星、あまり大樹を虐めないでよ」
「あれ…ここで紫は大樹の肩持っちゃうの?
抱き合ったり“好き”と言ったり…寛大な俺もそろそろ怒っちゃうよ?」
「好きってそういう意味じゃなく、弓道姿に対しての気持ちで……」
流星の腕の中で反論すると、呆れた視線が降り注ぐ。
「全く…これだから紫は目が離せないんだよな。
はい、もう帰るよ。日没だし、腹減ったし。
今夜はサヨナラジンギスカンにするっておばさんが言ってたよ」
「またジンギスカン…」
これで、この夏何度目のジンギスカンだろう。
瑞希君が喜ぶからって、週一…いや週二の時もあったよね。
秋に近付いたから、おでんとか石狩鍋とか、私は違う物が食べたかったのに。
柏寮に戻ったら3人で鍋をしようか?
でも東京はまだ残暑が厳しいよね…
あと1ヶ月くらいは無理かな……
今だ流星の腕の中、そんな事を考えていると、
妙に艶のある声が、耳に流れ込んだ。
「夕飯終わったら覚悟しといてよ?
今夜はマジでお仕置きだから」
「え……」