ラベンダーと星空の約束
 


冗談だと思いたいけど…

目だけ笑ってないから、本気なのかも。



ただでさえ夜這いに来る度ヒヤヒヤさせられたのに、お仕置きって…


実家で激しい行為は控えて貰いたい……





流星が大樹に背を向け歩き出し、

私は流星の肩の上から顔を覗かせ、弓を片付ける大樹に声を掛けた。




「大樹もジンギスカン食べにおいでよ。
明日東京に戻るから、しばらく会えなくなるし」




「おー分かった。んじゃ3人で車で行くか。

自転車は置いてっていーぞ。その内、青空か俺が乗って行く」



「あっ いーね!
大樹の運転久しぶり!」



「車…?」





喜ぶ私と驚く流星。

大樹は倉庫の中に入って行った。



少しして

「ドドドド…」と大きなエンジン音を響かせ、オレンジ色の農業用トラクターがゆっくり現れる。




「車って…これか。
念のために聞くけど免許って…」



「大樹まだ16だよ」



「だよね…」





低速でゴトゴト走る、定員オーバーのトラクター。



夕日は遠くの暴風林にうっすら光りを残し、まさに夜に入ろうとしている黄昏(タソガ)れ時。



眩しいライトを光らせた普通車が、迷惑そうに私達を追い越して行く。



小さな頃は大樹のおじさんに、良くトラクターに乗せて貰っていた。



我が家にも一台あるけど、大樹の家の方が大きく迫力があって楽しい。



中学生になってから、自分家の畑でトラクターを操る様になった大樹、

たまにこうやって、私と青空を家まで送ってくれたりした。



はっきり言って自転車と大して速さが変わらないけど、

トラクターの高い運転席は、気持ちが良くテンションが上がる。




久し振りの振動を楽しむ私と違い、真面目な流星は少しびびっている。




「おい流星、何キョドってんだ?まさか怖いのか?

お前の方がヘタレじゃねーか、ハハッ」




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