ラベンダーと星空の約束
言葉尻に合わせ、机を拳で「ドン」と叩き、
身を乗り出して唾を飛ばす3-Fの担任。
それを私の担任が「まあまあ」と宥めて座らせている。
彼氏の未来を潰す……
そんな事を言われたら、
「私のせいなの?
流星の為を思うなら、私が身を引くしかないの?」
と悲劇のヒロイン振ってみたくなるけど、残念ながら私にそんなキャラを演じるのは無理。
流星の未来は、私と一緒にファーム月岡を経営する。
それが私達の幸せで、最良の選択。
反論するのも面倒臭くて黙っていた。
ただ、長机の上に飛んだ先生の唾が気になり、ティッシュで拭こうかどうしようか迷っていると、
流星が私の代わりに反論してくれた。
「先生、紫に当たるのは止めて下さい。
俺はいい大学に入って大企業なり官僚なり、エリートコースに進む気はないんです。
合格率、進学率アップに貢献出来なくて申し訳ないですが、
そういう人生を望む人間もいるんだって、これを機にお偉いさんに言って下さいよ」
流星の言葉に3-Fの担任は頭を振って溜息を吐き出す。
そして今度は作戦を変更し、穏和な声で語りかけた。
「いいか大文字、先生はな…若さ故に目先の恋に目が眩んで、未来が見えなくなってるお前の為に言ってやってんだぞ?
よく考えろ。
これから沢山の女性と出会う機会がある。
月岡と別れたらお前どうするんだ?
それでもファーム月岡とやらに就職するのか?
冷静になれ。
取り合えずT大に行ってから、将来の事をゆっくり…」
3-Fの担任が熱弁を奮っている途中、
瑞希君が「ふあ〜あ〜」とわざとらしい欠伸(アクビ)をした。
それが切っ掛けで、先生の矛先が今度は瑞希君に向かう。
「二宮、他人事みたいに何を呑気(ノンキ)にしているんだ。
お前も早く書き直せ」
「え〜、何で僕まで?
ちゃんと進学しようとしてるじゃん。〇〇美容専門学校に」