ラベンダーと星空の約束
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◇◇◇
[side 流星]
平穏な日々が続いていた。
進路についてあんなに口煩かった担任も、最近は何も言わなくなった。
それどころか、故意に俺を避ける。
目も合わせないし、担任の現国の授業でも指されない。
虐め過ぎただろうか……
まぁ、既婚者の身でありながら、娘の様な年頃の女の子と遊んでいるあの人が悪いけどな。
9月下旬になると暑さもようやく和らぎ、秋めいた風を感じる様になった。
俺の部屋のエアコンもようやく一仕事終えて、冬が来るまで数ヶ月の休暇に入った。
涼しくなったのはいいが、
エアコンの休業に伴い、紫が俺の部屋で過ごす時間を減らしてしまったのは良くない。
東京の暑さが苦手な紫。
残暑の厳しかった最近までは、エアコンのある俺の部屋で一日の大半を過ごしていた。
しかし気温が下がると、以前の様に自室に戻って過ごしている。
彼女の部屋は隣の109号室。
食事も寝るのも俺の部屋だから、いいと言えばいいのだが……
「帰るね」と言われ、部屋を出て行かれると、一抹の淋しさを感じる。
淋しさで引き止める俺が女々しいのか、
それとも、さっぱりした性格の彼女が男っぽいのか……
いや、紫は男っぽくはないか。
離れている時間を作ろうとする彼女には、彼女なりの考えがある。
「初々しさを無くしたくないもの。
離れている時間があれば会いたいと思うし、会った時にときめくでしょ?」
そんな可愛い事を頬を染めながら言われたら、
「分かったよ」と引き下がるしかない。
けれど、本心は別の所にあった。
出来るだけ多くの時間を、紫と過ごしたい。
食事中も勉強中も、テレビを見ている時間さえも、彼女を視界に入れていたい。
何気ない日常の一コマ一コマに、彼女の存在を感じていたい。
人生は、君が思う程長くない。
終わりは来る。
そう遠くない未来に…
そんな事を君に告白する勇気は、未だ持てずにいるが……
4週間おきに、通院していた。
心電図を取り主治医と話しをし、命を繋ぐのに欠かせない、免疫抑制剤を貰って帰ってくる。